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IMAGES:Nils Laengner
TEXT:Sofiane Sehili with Pedaled

バイクパッキングの旅に出る――それはまるで小さな冒険のはじまり。

けれど、その準備となると、誰しも少し腰が引けてしまうものです。
何を持っていけばいいのだろう?どんな装備が必要で、荷物はどうやってまとめるのが正解なのか?頭の中は疑問でいっぱい。
そんな悩める旅人たちの道しるべとなってくれるのが、ひとりの男。世界を舞台に走り続けるバイクパッカーであり、ウルトラエンデュランス・レーサーでもあるソフィアン・セヒリです。
私たちが彼に会ったのは、ある晴れた午後のこと。彼は、まるで物語の主人公のように颯爽と現れました。
全身サイクリングキットに身を包み、顔には汗の名残と、走り終えた者だけが持つ静かな満足感が漂っていました。
「さあ、始めようか」とでも言うように、ソフィアンは自転車のサドルから降りると、バイクパッキングにまつわる知恵と経験を語り始めました。
ここでは、そんな彼の言葉から紡がれる、旅の準備に役立つヒントの数々をご紹介しましょう。

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どんなバイクがバイクパッキングに向いているの?

ソフィアンに聞いた、バイク選びのコツ。それは、「汎用性」と「タイヤのクリアランス」。
「最近のバイクは本当によくできていて、アスファルトを32〜35Cのタイヤで軽快に走れる一台を持っていれば、42〜44mmの太いタイヤに履き替えるだけで、グラベルロードも存分に楽しめるんだ」と彼は語ります。
彼自身が好んで使うのは、1X(ワンバイ)ドライブトレイン。前のギアが一枚だけというシンプルな構造で、長時間のライドでも考えることがひとつ減る、それがとてもいいんだそう。
「フロントは40Tか42T。脚力にもよるけど、それくらいにしておけば、リアは10-45とか10-51の大きなカセットにして、どんな地形にも対応できるよ」と、まるで地図のない冒険を前に装備を語る旅人のように彼は続けます。そしてもう一つ、忘れてはならないのがフレームの素材。
「もし、何ヶ月もかけて遠く離れた世界の裏側まで走るつもりなら、スチールフレームのバイクがいいかも。壊れても修理が簡単だからね」。

一泊の旅で、必ず持っていくものリストどんな冒険にも、その人なりの“必需品”があるもの。
ソフィアンにとって、それはまず「マットレス」。
「地面に直接寝るよりはるかに快適だし、何より暖かい。

これがあるのとないのとでは大違いなんだ」。天候に応じて持っていくのが寝袋。ただし、彼はタープやテントはほとんど持たないと言います。
「雨が降らなければ星の下で寝るし、どこかに屋根のある場所を見つけたら、そこで休む。山奥のど真ん中でも、小屋とか簡単なシェルターなら、たいてい見つかるよ」と。

そして最後に、彼が熱く語るのが――枕。
「軽いし、めちゃくちゃ小さい。でも、すごく大事なんだよね。
ちゃんとしたインフレータブル(空気で膨らます)枕を買ったのは、僕にとってゲームチェンジャーだった。
何年もかかったけど、もっと早く買えばよかったって思ってる」。

枕のほかに、ちょっとした“贅沢品”は持っていく?

ソフィアンが旅に出るとき、どうしても手放せないものがあるそうです。それは意外にも、「爪切り」。
「ないとダメなんだよね」と笑いながら、彼は言います。
そしてもう一つは「電子書籍リーダー」。「これを贅沢品って呼べるかどうかはわからないけど、旅の間って、すごく時間があるんだ。だから僕にとっては必需品に近いかも」。
モロッコを訪れたときも、レース中ではなかったものの、その前後の時間に電子書籍で本を読んでいたと言います。
「ミャンマーを旅していたとき、ジョセフ・コンラッドの『闇の奥』を読んでたんだけど、不思議なくらい、その旅とぴったり合ってたんだよね」と、懐かしそうに語る彼。「これがないと、夜の時間をどう過ごしていいかわからなくなる。バイクを降りたあとの時間も、自分にとっては大切なんだ」。

どんなバッグを使ってるの?

愛用しているのは、**Miss Grape(ミスグレープ)**のバイクパッキングバッグ。
最低限持っていくのは、サドルバッグ、ハーフフレームバッグ、そしてトップチューブバッグの3つ。
バッグの中身はこう分けているそうです
サドルバッグ → 衣類
トップチューブバッグ → 電子機器類
ハーフフレームバッグ → ライド中に必要になるもの(工具、洗面道具、パスポートなど)
そして、キャンプ道具を持っていく場合には、ハンドルバーにハーネス+ドライバッグのセットを追加します。

荷造りのコツは?

「うまくパッキングするには、ちょっとしたコツと経験が必要なんだよね」。
たとえば、サドルバッグのパッキング方法。「奥の方には、できれば使いたくないものを入れる。たとえば予備チューブとか、暖かい日ならジャケットとか。すぐに使う必要がないものは一番奥に。
手前には、途中で使う可能性のあるものを入れるんだ」。そして何より大事なのは、ごちゃ混ぜにしないこと。
「バッグの中に、ちょっと服、ちょっとキャンプ用品、みたいに混ざってると、本当にダメ。どこに何があるか分からなくなる。だから自分の中で一つの“整理ルール”を決めて、それを守る。そうすれば、いちいち考えなくても済むんだ」。

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いつも携行する基本的な工具や修理アイテムは?

チェーン切り付きのマルチツールは欠かせません。これは本当に重要。
そして当然ながらポンプ。私はチューブレスタイヤを使っているので、チューブレス用のリペアキットも持ち歩きます。
チェーンリンクやクイックリンクも必携。旅の長さによっては、ブレーキパッドを持っていくのも安心です。
あとは、小さな布とオイル。意外に忘れがちなものが、実際には命を救ってくれることもあります。

スペアや工具を選ぶ基準は3つです。重さ、かさばり具合、そして命を救えるかどうか。例えばチューブレスバルブ。重さはほとんどないのに、もし破損したら大変なことになる。だから必ず持ちます。
スポークも同じ発想です。重くないけれど、助けになる。
そしてシフトワイヤーも忘れません。

ウェアについては?

夏と冬で違いはありますか?
必携アイテムは?
実は、夏と冬でそれほど大きな違いはありません。基本はビブショーツ、長袖のベースレイヤー、それにジャージ。
予報がかなり暖かくない限り、レッグウォーマーを持ちます。手袋も必ず。
軽いのに、手が冷えるのは最悪の感覚だからです。
そして雨具。レインジャケットは必需品です。旅先で外食するときも普通のジャケット代わりになります。
ソックスは数足、ウール製を選ぶのは匂いが気にならないから。パッカブルのダウンジャケットもあると快適です。長い一日の終わりに食事がとれていないと、体はすぐに冷えやすくなるので。

でも、それがサイクリングの魅力でもあります。
実は、そう多くを必要としないんです。

PEdALEDで特におすすめのアイテムはありますか?

私は Polartec® 生地を採用した Odyssey Alpha® Vest をテストしました。ベストなのでかさばらず、それでいてしっかり暖かいのが特徴です。
今年の Atlas Mountain Race の前に北モロッコを走ったとき、思った以上に冷え込みましたが、このベストのおかげで本当に助かりました。
それから Odyssey Cargo Bibs。これは最近特に気に入っているアイテムです。ジャージのポケットに加えて、さらに収納スペースがあるのはすごく便利。荷物を整理しやすいし、私はポケットが多ければ多いほど嬉しいんです。
さらに Merino Long Sleeve Base Layer。肌寒くなったときに、バイクから降りてすぐに着られるのが良いですね。
見た目も上品で、とても使いやすいアイテムです。

バイクパッキング旅におすすめのプレイリストやポッドキャストは?

私は True Crimeの大ファンです。特に好きなのは Serial の Adnan Syed に関するシリーズですが、一番のお気に入りは Hondelatte raconte ですね。
音楽は主にロック。ポップロックやフォークから、ブラックメタル、デスメタルまで幅広く聴きます。
私の定番プレイリストは、そんな多彩なジャンルが混ざったものです。

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