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文:CYCLE TOURING オオマエジムショ 大前 仁

オオマエジムショはランドナーの専門店。
泥除けとキャリア、そして革サドルを使った旅の自転車にこだわり、ハンドメイドで製作している。
店主オオマエはサイクリスト歴45年、サドルといえば「ブルプロ」の世代であり、今回の復活を誰よりも喜んでいる。

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ブルプロの写真は左から1966-1977-1979-1984-不明(2020前後)の5点

ロードレースシーンを席巻したサドル

ツーリング用サドルの定番は今も昔も少し幅広の6インチ3/4幅(175㎜)のB17スタンダードであることに間違いはない。

そして、昔はこのB17のバリエーションとして、少し幅の狭いB17コンペティションがラインナップされていた。今から60年以上前の話だ。

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今回復刻されたブルックス・プロフェッショナルはB17コンペティションと同じく少し狭い6インチ(160㎜)の幅を持つ、かつてロードレースシーンを席巻したサドルだ。

そう、ブルプロはレーシングサドルだ。

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第18回オリンピック東京大会・自転車競技写真集
VELO CLUB TOKYO
協力 横尾双輪館

「ブルプロ」とは

ロードレースの古い写真を見れば、サドルはほとんどライダーの尻に隠されているものの、1960年代後半にプラスチックベースのサドルが使われ始めるまでの長い間ずっと、レースでは革サドルが使われていた。

日本の自転車雑誌の創刊はニューサイクリングが1963年、サイクルスポーツが1970年だ。この前後、1964年には東京五輪が開催され、それを境に海外の自転車や部品が日本に入ってきた。
この五輪の自転車競技を記録した写真集を見れば、ロードもピストもほとんどのサドルに鋲が打たれ、革サドルだったことがわかる。

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通称ブルプロ、この呼び方が懐かしく感じられる人もいるだろう。

新品の革サドルがライダーの尻に馴染むはずがない。

メカニックたちはサドルオイルを塗り、ライダーはそれに跨がってサドルを馴染ませたのだという。
サドルを馴染ませる専門の業者がいたという伝説さえあるし、ライダーは自分の尻にあったサドルを3個用意してレースに臨んでいたのだという。
ブルプロがレーシングモデルであることを証明するように、サドル後部のバッグループも付いていない。

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ブルプロの特徴の一つに、サドル先端の革のカットが挙げられる。

3個の銅鋲で固定された先端部のすぐ先で革が斜めにカットされ、それが古いブルプロのアイコンとなっていた。

後年になるとバラツキはあるもののこの先端のカットは失われてゆき、金具の前まで革が被っているデザインのモデルが増えた。

革サドルは使い込むにつれて少し伸びてくる。

先端部分にあるボルトを締め込むことでこの伸びを吸収して革を張っていくわけだが、それでも伸びを取りきらないときは奥の手を使うことになる。

革を止めている鋲をいったん外し、別の位置に穴を開けなおして革の張りを取り戻すのだ。

革に別の穴が開いているのを隠すために、打ち直す鋲は頭の大きなものが使われた。

今の日本にもまだこの技術を持った人が数人いるはずだ。

※現代のレザーサドルへのリベット穴の移設加工は革質的に向いておりません。

そして、ブルプロ復活

このブルプロ、そして大銅鋲で打たれたチームプロともにここしばらく生産がなされていなかったが、熱烈なラブコールに応えてまずチームプロが復活。

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クロワッサンと呼ばれる、リアのサドルベース部

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サドル先端が斜めにカットされた復刻ブルプロ

サイドには誇らしげに「BROOKS PROFESSIONAL」のスタンプが押され、サドルレールもクロワッサンももちろんクロームメッキとなっている。

そして今回、ブルプロが限定復刻された。

先端は60年代を彷彿とさせる斜めカットが入っていて、高級サドルであることを主張している。

B17よりも幅が狭いデザインはランドナーやスポルティフだけでなく、クロモリロードにこそシンデレラフィットする。

プルプロを使ったエロイカ仕様のバイクなんて、一瞬にして前世紀にワープする秘密兵器となるだろう。

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